nomuran's diary

野村直之のはてな日記(後継ブログ)です

mixi規約改定問題 18条&付則問題の論点

 もはや文面や事実経緯については記す必要ないほど随所に転載されていますので改めてここでは引用を繰り返しません。また、「昨日の日記のキーワードランキング上位からこのネタを(Mixiが)恣意的に削除してないか?」に象徴される、疑心暗鬼、信頼の失墜を招いたことについても、多彩なメンタルなリアクションが考えられるのでここでは触れません。
 内容は同一でいいから、「わかりやすく」表現を改めるべし、というマイナーな問題にも触れません。運用付則も同様です(こちらは契約本体と一体化されれば意味はありますが)。
 
 内容自体に関する論点をなるべく簡潔に記すように試みます。
 
(1)「利用制限を利用者(≒著作者自身)だけがかけられるというSNSの価値の源泉を破壊してしまった」
 なんといってもこれが最大の問題点でしょう。小飼弾さんもそう書いておられました。ブログと違って、誰にでも見えないようにできること、特に一部SNSと違って会員以外には絶対に見えないようにできていたメリットが消える可能性を規約に明記してしまった。これはSNSとして自殺行為に近いのではないか。
 
(2)「著作権(経済権)の無許諾の事前包括ライセンス」
 「引用」ではなく、著作物全体を商用目的他、現時点では不明の目的で利用する権利を包括的に認めさせようとしている点。自らそれを制限する記述内容が存在しない点。
 
(3)「著作人格権を行使しないことという異常に強い制限を、目的・用途・様態・条件などなんらの制限もなく迫る内容」
 違う内容や表現に書き換えられたり、別人の名前で公表されても文句いえないのが、著作人格権の放棄です。そんなことは日本国著作権法ではそもそも不可能、という法律家の解釈も存在しますが、軽微な変更は、コンピュータ利用の表現の際に認められるようになりました。その条文を引用し、どのような必要性、条件の下にmixi側の行為をその条文の適用下に正当化できるかを規約に込めるというのが最近の常識となっていた。異常な内容であるのに加え、現状では違法性の疑義のある条文。
 
(4)「法の非訴求原則を破った点」
 過去の【行為】にまで適用する、という、多くの人にとって非常識且つおそらく憲法違反で無効な規定を簡潔に堂々とわかりやすく付則に記した点。違法、無効な条文と思う。
 
(5)「内容の訂正を極力拒み、表現の修正で対応したい、という姿勢をとり続けた点」
 利用者の著作物の著作権を事前の個別許諾(通常は署名・押印入り文書による)無く移転できない著作権法上の規定は書いても書かなくとも同じだ(著作人格権はそもそも日本では移転不可能)。しかし、(他サイトなみに)それさえ明記すれば、すなわち表現の修正すれば、内容は全く訂正はする必要はない、というメッセージを2回のフォローの際に発した点。
 
(6)「大衆の反応をみながらずるずると少しずつ譲歩する姿勢」
 不祥事、炎上の際のリスク管理は、「最高責任者が即発言して非を認め、最大の対応を迅速に自ら宣言し血を流す(お金を払う)」というもの。突発事故で責任者やトップが徹夜したわけでもなかろうに。この古来の知恵を発揮せず、悪いお手本にならっているようにみえる点が、同情したい関係者をも突き放す。普通のスタンスならば、18条と補足説明(言い訳)との乖離から、胡散臭い、何かごまかそうとしている、という印象を与える。翌日、翌々日のフォローのメッセージは、迅速ならぬ拙速な対応としか言いようがない。内容を本当に良くしようというよりも鎮火に力点を置く姿勢が強く見られればユーザの不信を買うのは当然であろう。
 

 ともすれば契約書は、強い側(BtoCの企業側や、BtoBの発注側)を守る記述に終始しがちなものですが、BtoCサービスでは、顧客を守る内容を込めなければ、今後まともな商売はできなくなるだろう、と言われてからずいぶん経ちます。
 
 とくに、極めつきのプライバシーの塊のような著作物を独占投稿していただいているSNSでは、その流出をどう防ぎ(ユーザやその家族の生命、社会的生命を守り)、安心して使えるようにするか、についての記述が当然重視されるべきです。顧客側の権利、ならびに、運営者側の義務と禁止事項を多めに、広めに明記してこそ、信頼され、競争に打ち勝てるSNS運営者になれるのではないでしょうか。そこを、圧倒的独占をバックに、正反対のことをされてはバッシングを受けて当然だ、と思えます。
 
 ↑最後は、最低限守るべきことを越えて、市場一位の立場としてとるべき王道的振る舞いに言及させていただました。