nomuran's diary

野村直之のはてな日記(後継ブログ)です

Future. It isn’t what it used to be.

「(これからの)未来は、過去に未来を展望したような未来じゃない」
という意味のことを、実に簡潔に表現した、なんとも素敵な言葉の綾であります。

発言者は、
Dr. Rick Rashid, Senior Vice President, Research, Microsoft Corp. です。
2001年のACL (Association of Computational Linguistics) 年次大会がシアトルで開催された際の招待講演でした。

内容は意外にコンサバで、圧倒的なハードの進歩の例としてグラボをあげて、2,3年前の100倍の性能というのが、ムーアの法則を超越していて、凄いことになりそう、とか、でした。しかし抜群のプレゼン力に皆、魅了されました。

※それから8年弱たって、さほど質的な変化は起きていないかも、という気もします。iPhoneとかWiiとかのインパクトの方が大きいというか。。
 
週刊アスキー10周年記念号に、2045年の増刊というのが付いていて、PSP (Public Service Platform)を貧民世帯でも使えるように、とか理解困難な未来記事が作文されていました。SpielbergのMinority Reportが描いた2052年の世界のように未来的(かつリアリティ感じさせるもの)ではなく、今日の生活、おたく文化の延長みたいな身近なイラストでしたが、違和感は十分ありました。
 
※さもないと信じちゃう人が出てきて大変でしょうから。。


2/12号、いま書いている時点で最新の週アスは、福岡俊弘編集主幹と神足さんが一緒にラスベガスのCES2008に行った際の印象とかが綴られていて、個人的には楽しめます。p29をみてみましょう。
 
「本当の「来る」未来はいつもとても滑稽なものだった」

・・・10年前はいたるところで見つけることができた(未来の)カケラは、今は探すのに苦労するようになった。自分の目が節穴になった・・・否定できない事実だけど。でもそんなことを差し引いても、確かに未来は探しにくくなった。

13年前ビルゲイツは、こんな未来を披露した。「・・お気に入りのレストラン評論家がその店をどう評価しているかもチェックしておきたいところだし・・・行ってみることにしようと心に決めたなら、店への予約と地図、現在の道路状況に応じたドライブルートの指示なんかがリアルタイムに表示されているようになるだろう・・」(若干表現を改め)


 世界の殆どの人が、WebもGPSも知らなかった13、4年前(1994〜5年の執筆だから)とは信じがたいほど、ニーズと、それに応える技術の進化の行き着く先を言い当てていたことになる、と福岡さんが書いています。
 
 確かに、マッシュアップまで予見しているのは凄いことかもしれません。
 
 そのビルゲイツの基調講演がこれで最後、というのに感慨をこめたあと、福岡さんはこう語ります。

・・だから、自分たちで未来を探さなければならない。滑稽で、場当たり的アイディアで、およそ受け入れられそうも無い未来。それがおそらく本当に「来る」未来なのだと思う。携帯電話が初めて世に出たとき「家の外に出てなんで電話しなきゃなんあいんだ」と笑ったように。・・
 この次の「10年間」が最高だった、とあとから言うために、僕たちはその"未来"を、この1年間本気で探してみようと思う。

 
ということで、3月刊の週アスより、未来技術の新連載をスタートするとのことです。

 
 技術予測は、市場予測に比べればまだずっと易しいのかもしれません。例えば、今世紀初頭に、今のロシアの金満ぶりを予想していた人がどれだけいたでしょう。 
 
 ただ、例のアテンション・エコノミーや、潤沢経済という前提を成立させたのは、かなりの部分テクノロジーの進歩によるわけなので、このあたりは、異常に洞察力の鋭い人なら予見できたのかもしれません。規制緩和が予定通りに行われるようだったり、デジタルの広範なインフラの建設の時期に合わせて確実に起こることはあります。
 
 しかし、iTunes Music Storeの覇権を事前に予想できた人はあまりいないでしょうし、もっとアナーキーWeb2.0的サービスを一挙にメジャーにするベンチャーの活動を捕捉しきっている人などいないでしょう。(もしいたら、草創期のYoutubeに出資したりして億万長者になってるわけですね)
 
 断層的な進歩、進化を予想するためのキーワードとして、福岡さんの「滑稽」というのは案外使えるかもしれません。大胆な予想であることの裏返しであり、また恐らく「陳腐」(例:2015年には空飛ぶ車ばかりになっているとか)さとは仲良くない概念のような気がするので。