nomuran's diary

野村直之のはてな日記(後継ブログ)です

WebAPIの補完財;mextractrの補完財は?

[http://ameblo.jp/whatawondefulworld/entry-10105583056.html:title=このブログ記事はなかなか釣りの効果がありますが(笑)、括弧内の「補完財」の概念は、時々思い出すに値する重要なものであります。

補完財とは、ある商品/サービスが市場に浸透、普及、さらには寡占的な地位を占めるに至るのを助ける役割を果たす別の商品/サービス。

例:
 珈琲と砂糖、映画とポップコーン、材木と線路、PCとデジカメ。
 ガソリンと車と高速道路。ゴムとタイヤと車。

そういえば昔のTVCMで、「○リープを入れないコーヒーなんて」という台詞を視聴者の耳に焼き付けてたのは、人工的に補完財を作り出す(新しい飲食習慣)、あるいは強化する、ストレートな試みだったといえそうです。

一見、風が吹けば桶屋が、的な補完財に:
ゴムタイヤとレストラン の例があげられています。そう、ミシュランです。
ミシュランガイドの3つ★レストランなど、車で外出/旅行して外食する需要を引き出すために作られた、というのは殆ど屁理屈のようでもありましたが、「補完財」と言われると説得力を感じます。この意味で、「多角化は天才のみが理解できる技なのだ」は正しそうです。

重要な(穴場の)補完財に、競合にさきがけて気づき、戦略的に対応することがビジネスでは死命を制するというのも正しい。
近年、私にとっても最も印象的だったのが、引用元にもある、IBMが自社のITソリューション、コンサルのサービスにとって、Linuxをはじめとするオープンソースが補完財であることにいち早く気づいて、変身を遂げた出来事でした。

Googleはじめ、インターネット広告代理店は、
「人々のインターネットの利用を増加させることはすべて、彼らのコアビジネスにとって補完財なのだ。」
ということになります。キーワード広告のみならず、伝統的なバナー広告や、企業のHP広告の企画から実施を請け負う、伝統的な広告代理業のネット版(サイバーエージェント等)、広告コンテンツをWebAPI提供して幅広くマッシュアップしてもらうことを狙うリクルートさんなども同様。広告コンテンツのWebAPI提供の場合は、無償でマッシュアップされるだけで露出が増え、売上が増大するわけですから、インターネット利用の中でも特にマッシュアップを隆盛させることが利益に直結するわけです。マッシュアップ・アワードの実施は当然の施策です。
 

前置きが長くなりました。
メタデータ自動抽出APImextractrの補完財にはどんなものがあるでしょうか。
そもそもWebAPIというのは、それ単独では完結した商品となり得ないサービスです。

必ず何か別のWebサービスや専用クライアント、アプリケーションに(多くの場合は他のWebAPIと連携しつつ)組み込まれてユーザを獲得し、ビジネスとして成立していくものであります。

伝統的なビジネスモデルの分析におけるステークホルダー間の価値連鎖value chainというものの縮図が、Webサーバ、クライアント上に実装されている、とみなすこともできます。もっと直接的に、情報のSCM (Supply Chain Management)ということもできるでしょう。すなわち、あるWebAPIの入力と出力が、情報加工のための原料「購買」と加工品の「出荷」に相当します。

直列でないビジネスモデルもいろいろあるわけですが、、とりあえず、入力側、出力側に隣接する機能やコンテンツ、UIの様々なモジュールで、相互に補完財となるもの、すなわち、1+1=2以下でなく、3にも5にも10にもなりそうな、相乗効果をもたらす組み合わせを考えることには価値がありそうです。

mextractrの入力は、日本語のプレーンテキストです。
これだけでは無色透明、ニュートラル過ぎるので、「そのままでは困った状態」「(他の機能やコンテンツとの連携のために)構造化や意味抽出が望まれる状態」の日本語プレーンテキストを想定してみましょう。例えば、企業から出て行くemail。社内の誰が執筆したものにせよ、日付と曜日の対応が間違っていたら、それはその企業にとって不利益をもたらすことでしょう。これが防止できるようにするためには、mextractrを機能拡張するか、あるいは、出力結果を再計算、加工して、日付と曜日の対応関係をチェックする別のWebAPIや機能モジュールを後付けします。そしてそれを、社員にタイムリーに「通知」する仕掛けがあれば、潜在不利益(アポ取りの手戻りによる時間の損失や機会損失をはじめもっと重大な被害もあり得る)を未然に防止できる、ということで価値を生み出すことができるわけです。

したがって、「通知」の仕組みとして、社員が使っているスケジューラ、カレンダー、メーラ(プラグイン?)、グループウェア、などが、上記のvalue chain における補完財となります。通知機能ですから、それが得意な携帯端末上にのっていることも重要でしょう。

これらの補完財が魅力的なユーザインタフェースをもち、必需品となっていけばいくほど、mextractrも使われるようになっていく。
このあたりまでは、大部分、論理によって、事業計画を導くことができます。もちろん市場調査、分析、予測や、投資内容、タイミングの分析、予測も必要です。それらを経て、なおも残った有力候補からは、えいやっ!で、好きで夢中になれるものを選ぶ、という手順になるかな、とは思います。

※例えば、5W1Hの構造情報の塊でありながら、現場で、構造化された情報を活用しきれていない旅行業方面への応用など、大好きで、魅力を感じるのですね。。


ちょっと手の内をばらし過ぎちゃったかもしれませんが(笑)、オープンソースの優秀な若者(やはてなさんなどの会社)が手の内を披露して切磋琢磨しておられるのを見習うべき、と直観しまして、書いてみた次第です。



ps. WebAPI比較マッチングサイト http://www.api-match.com も少なくとも2つの意味でmextractrの補完財ですね:
(1)カタログサービス、マス媒体として (広報によるWin-Win)
(2)補完財を発見するためのサービス

この(2)の機能が重要だと思えてきたのは最近です。
本来はマッシュアップ開発者向けのサービスですが、WebAPI提供者さん達に対して、優れた補完財を発見するためのサービスともなっているわけです。マッチングとはお見合い、、以下、数理工学で昔ならった2部グラフの最大マッチングとか懐かしい別ネタになりますので、また新作日記で書きたいと思います。