nomuran's diary

野村直之のはてな日記(後継ブログ)です

燃料サーチャージ は一種の逆進課税ですが、、

航空燃料の高騰に悲鳴を上げた航空会社(エアライン) が、「燃料サーチャージ」を数年前に発明したかと思います。

たとえば、ANAのアナウンスによれば次のようになっています:

<2008年4月1日ご購入分より> 政府認可申請
路線 燃油特別付加運賃(1旅客1区間片道当たり)
日本で販売される場合 海外で販売される場合
日本=欧州・米国本土・カナダ・中東 20,000円 180米国ドル
日本=ハワイ・タイ・シンガポール・マレーシア・インド 14,000円 126米国ドル
日本=台湾・香港・グアム・ベトナム 8,000円 72米国ドル
日本=中国 6,500円 59米国ドル
日本=韓国 2,500円 23米国ドル

▼適用条件
(1) 燃油特別付加運賃は全てのお客様にご負担いただくもので、大人・小児・幼児ともに同額となります。 また、AMCマイレージ特典航空券ご利用の場合も同額となります。

これは大発明でした。
格安航空券を追認し、航空会社が自ら実質格安のチケットを直販し始めたり、FFP (Frequently Flyer's Point;いわゆるマイレージ・プラン) による利益圧縮がシャレにならなくなってきた昨今。ファーストクラス、ビジネスクラスの運賃からみれば微々たる比率の燃油特別付加運賃は、これらのケースでは極めて大きな比率となります。もともとゼロ円だった特典航空券なら無限大倍ですね。2歳以下の幼児もかなりの倍率です。

これが、標題の逆進性というものです。
多数を占めるエコノミークラス(coach class)、中でも、上記のように安い席(幼児にいたっては席すらなく、親の膝の上!)ほど、付加料金の比重が非常に高くなるわけですから、落ち込んだ利益率の回復には劇的な効果があったことでしょう。
 
 
それを回避できる魔法があれば、誰でも知りたい。
そこにつけこんだかのような、羊頭狗肉のタイトルの記事をみつけてしまいました。

「腹立つ燃料サーチャージを払わない法」
さて、このタイトルを承けた回答らしきものを探してみましょう。
一段落目は、結論を抜いた要旨。つづく7段落目までは、少々品の無い表現で「頭にくる」燃料サーチャージとは何か、4月からどのくらい値上げされるかを説明しています。
 
ようやく回避策が出てくるかと思いきや、「ただ、世界の主要航空会社にとって燃料事情は同じ。どこかだけ格段に安い燃料を手に入れるのは難しく、サーチャージ値上げも共通している。」と牽制かけられ、雲行きが怪しくなります。 

例えば、アジア系の航空会社は欧米や日本のエアラインに比べ、サーチャージが控えめの設定をしているケースが見られる。運賃を確認する際にサーチャージ額を比較するのも忘れないようにしよう。アジア方面への旅なら、中国、香港、台湾などの航空会社を選択肢に加えてみたい。

いくら節約できるのでしょうか? 書いてありません。
韓国は除外されているので、それ以外の3国についてみてみましょう。
 
台湾:中華航空http://www.china-airlines.co.jp/news/fuelsurcharge/index.html
   「札幌・東京―台北 57米ドル 3米ドル 60米ドル」
   なるほど、たしかにANAの72米ドルより安いかな、、と思いきや、逆でした。

 ANAは、3月31日までは、50米ドルで、台湾の航空会社より2割近くも安い。
   日本=台湾(*1) ・香港(*2) ・グアム・ベトナム 6,000円 50米国ドル

  ※名古屋以西では、中華航空の方が安いようです。


中国:中国国際航空公司http://www.airchina.jp/surcharge/
 4月からは6500円でANAと同額。しかし、3月31日までは、
 ANAの4,700円より高額なJPY5,900。


香港:ドラゴン航空のサーチャージ
 燃料の時価に応じてかわるようで、、しかし、1バレルが51ドルを下回るなんて夢のまた夢の昨今、ゼロになることはあり得ない。日本発香港行きはどうも1800円のようです。うん、確かにこれは安い。しかし、「回避する方法」ではありません。

 乗り継ぎ便の場合、両方の便でサーチャージが発生するものの、2便分を合算しても、直行便より安くなるケースがある。

せめて1つは例示してくれないと怪しげです。
高くなるケースはないんでしょうか。
直行便が欧米まで2万円で済むのに、
日本=ハワイ・タイ・シンガポール・マレーシア・インド 14,000円
ということで、そこから先、欧米へ、6000円以下、というのは普通では無いような気がします。しかし、不存在の証明はコストがかかり過ぎるので、この辺で。

欧米に行く場合は直行便に比べ、乗り継ぎの面倒が生じるが、時間の余裕があるなら、一考の余地がある。香港やバンコクのような近代的空港での一服があった方が直行よりもよいと思える人には、さらに意味があるだろう。
 そもそもアジア系エアラインで、アジアに旅立つというのも悪くない。サーチャージがきっかけになって、アジアの魅力を再発見できるかも知れない。

はぁ。回避策とは何の関係もないようですが。。
経験からいえば、乗り継ぎ便は疲労が3倍。欧米に行くのが目的の人に、「サーチャージがきっかけになって、アジアの魅力を再発見できるかも知れない。」とごり押しされても、殆どの人は苦笑して戸惑うだけではないでしょうか。南回りの欧州便で、深夜のデリー空港におろされたことがありますが、空港に数時間いて疲れただけで、「アジアの魅力を再発見できる」チャンスがあるとはとても思えませんでした。
 

 サーチャージが不愉快なのは、旅人に何のメリットもないからだ。機内の時間が短くなるわけでも、乗り心地が良くなるわけでもない。エアラインの都合だ。だったら、払う額は極力抑えたい。

前半でクドく書いたことを再度記述しているだけですね。論旨が乱れています。
「エアライン(=航空会社)」を批判している点、おさえておきましょう。

 国内旅行へのシフトも選択肢に入る。鉄道運賃が上がる気配はまだない。サーチャージで消える3、4万円があれば、宿のグレードを上げられる。料理を奮発してもいい。こちらの方が金額相応のメリットがはっきり目に見えるだけに、納得して払える。同じグレードにとどめて、旅の回数を増やす手もある。

おぉ、凄い!
海外旅行に行くときに燃料サーチャージを回避する方法の回答を探していたら、「国内旅行に行けば回避できる」と。
「シフトする」のは一般的傾向、統計的平均であって、個人の行動についてこのような表現はつかわない、という突っ込みはおいておいても、究極の乱暴な論理で、「納得して支払う」(料理や宿に)ことを迫られます。しかも、国内旅行の回数を増やせ、と。ビジネスで何度も欧米にいかなくてはならないのに経費節減に頭を悩ませる企業経営者はどうしたら良いのでしょうか。個人の特典航空券をつかって、私公混同で出張したことが何度もありますが、サーチャージを回避する方法はみつかりませんでした。

 どうしても海外旅行にこだわるなら、売り手側の足もとをみたい。こちらの希望する時期に出発する旅は金額が売り手の事情で決まりがちだ。だが、売り手がうまくさばけずに残ったチケットは値が下がりやすい。
 売れ残りやキャンセルのツアーを扱う旅行会社の間際セールを狙って、割安プライスの掘り出し物を狙うのも一手。あらかじめ日程を空けておいて、間際で運良く手に入れば旅に出かけるし、だめなら別の過ごし方を考える。

上でみたように、どんなに安いチケットでも、無料の特典航空券でも、航空会社に同額取られるのが燃料サーチャージなのですが。
どうやって足もとをみるのでしょう?
しかも、航空会社(エアライン)に対抗して「回避策」を考えていたはずが、いつのまにか、旅行会社の足もとをみなさい、と変わっています。

旅行はできなくても別な過ごし方をすれば良い、という心構えを説いてくれていますが、余計なおせっかいを通り越して、腐った口臭が漂ってくるかのような押し付けがましいメッセージです。

和戦両様の構えで臨む必要があるが、時間を味方に付ければ、サーチャージなんていう押しつけがましいコストを払って、不愉快な気分で旅に出る必要もなくなるはずだ。

「和」とは何? 先行文脈のどこにも登場していません。
「戦」とは、どうも、「(海外)旅行しないことも辞さず」という心構えをさしているようです。
時間を味方に付けるとは、どうやら時間単価の安い暇人になりなさい、それで直行便をやめなさいといっているようです。直行便の方がサーチャージが安い可能性もあるのに。あるいは、行き当たりばったりで、一定額以下の旅行チケット(サーチャージとは全然違う料金です)が手に入らなければ旅行をやめる姿勢が、「時間を味方につけ」たことになるらしい。
 
ふぅ。
思い切り「釣られて」しまったのかもしれません(笑)。
いや、そもそも、嘘のタイトルで「釣って」読んでもらおうというのは、ライター、編集者の風上にもおけないのです。正直、あまり品があるとはいえない夕刊紙、タブロイド紙でも、ここまで酷い記事は滅多にないと思います。

「WagaMagaラウンジ」と名乗ったから免罪される、などとはよもや考えていないでしょうね?>日経さん