nomuran's diary

野村直之のはてな日記(後継ブログ)です

R.Schumann 39 :「古いものを尊敬すること。しかし、また新しいもの

音楽で心得ておくべきこと 39

「古いものを尊敬すること。しかし、また新しいものも暖かい心で迎えること。知らない名前に対して偏見をもってはいけない。」(R.シューマン)

 ただいまシリコンバレーに来ていますが、上記のシューマンの言葉は、シリコンバレー精神そのものではないでしょうか。
MITでPhD Studyの70%をやった私としては、今回のシリコンバレー滞在までは、Route128, ボストン近郊の叡智、ベンチャーを産み出す力に傾倒していました。しかし、ことITに関しては、完全にシリコンバレーが上であることを今回、腹の底から認識しました。MIT時代の同僚研究者には申し訳ないけれど、宗旨替えです。

 若い頃の非常に傲慢で五月蠅く語り始めそうに見えたR.ノイス@インテル共同創業者の写真。しかし、この顔は、彼がMITで物理学の博士号をもらって、その師の1人である、W.ショックレー@トランジスタの発明者がノーベル賞を受賞したことを祝うパーティで、感激しているときのものでした。50年代のアメリカの、目立とうとするリーゼント・スタイルの白人男性のイメージそのままでしたが、、その後転職を繰り返し、創業も2,3やった後、いずれ巨大企業となるインテルを創業。しかし、官僚的な組織を嫌悪する気持ちは片時も忘れず、痛快なアイディアに全てを賭ける姿勢を貫いたまま、この世を去ることができた幸福。

 彼こそ、「古いものを尊敬しつつ新しいモノを追求し、産み出し続け、、無名企業の自社製品が偏見のために売れずに苦しんだからこそ、『知らない名前に対して偏見をもってはいけない』ことを後進には貫き、自社の若者に敬意を払い続けた天才、と評価して良いと思います。

 彼だけじゃありません。そんな逸材がシリコンバレーには溢れています。もちろん、本物の学者(例えばNoam Chomsky)はみなそうなのですが、、いかんせん、正しいものは正しい、一般向けに理解される必要はない、という学問として当然の姿勢を貫いたために、ビジネス・リーダになったエンジニア達ほどの知名度、普遍的な評判(世の中に価値を与え変革したとの確たる評判)を獲得するには至りませんでした。
(それでも、さすがにチョムスキーはノイス氏より上かもしれませんが。。)

 セレンディピティトランジスタは、緻密に計画し尽くした研究プロジェクトの中から【偶然】発見された。このW.ショックレーの言葉の重大さを、一見ヒッピー風に自由に生きているシリコンバレーの、高い志をもったエンジニア達はよく理解しています。本物であればあるほど、先人の偉大さ(その多くは書物に詰まっています)に心からの敬意を払いつつ、自分のオリジナリティを常に確認し、磨き続けます。そして、自分が後進を評価するフェーズに入ったら、自分の苦労を顧みて、公平無私の姿勢を貫こうとする。

 日本のどこにどうやったら、このような謙虚な天才老人集団が若者を暖かく育てるコミュニティを創成できるでしょうか。。

(野村直之@メタデータ