nomuran's diary

野村直之のはてな日記(後継ブログ)です

R.Schumann 20: 「流行というものは、すべてまた時代遅れになるもの

流行というものは、すべてまた時代遅れになるものなのだ。そして、歳をとるまでそれを追い続けていると、誰からも認められない馬鹿者になってしまう。

「流行というものは、すべてまた時代遅れになるものなのだ。」
まったく仰せの通り。"流行" という概念の定義から導かれる"By Definition"といっても良いくらいに論理的。
楽家、作曲家からこのようなインパクトある言葉が出てくるというのに、普通だったら驚くべき、でありましょう。
でもシューマンさんは桁外れの評論家であり、ドイツ語を駆使して鋭いメッセージを繰り出すプロ中のプロです。

IT 業界では、"turn over" つまり、システムの総入れ替えを顧客企業、部門に促すために、意図的に流行のキーワードを作り出すことがあります。
元々はそのような意図なく作られ、使われ始めた言葉がそのようなキーワードに流用され、「消費」されるようになることもあります。
本来は永続的な概念であり、顧客企業の経費節減、利益増大、商品/サービスの品質向上、顧客満足に直結するはずのキーワードだったようなものでも、
流行語に祭り上げられたあげくに手あかにまみれ、そんなキーワードを使うこと自体が恥ずかしい感じになり、不本意ながら廃れてしまう、ということもあります。

シューマンさんが指摘したのは、このようなキーワードの生々流転、寿命のことではなく、その実体そのものの流行でした。
作曲の様式だったり、曲のオープニングやエンディングなどの演奏スタイルだったり、細かくはビブラートやアクセントのかけかた、クレッシェンドやデクレッシェンド、そして、テンポのとりかたや揺らし方、などなどを指していたと思われます。

プログラミング、ソフトウェアの場合、開発用の言語や、OS/Web等の提供プラットフォーム、ユーザ?インタフェース、提供方法(パッケージかオンライン?サービスか)、などなどに流行があります。関連のハードウェアにも流行がある、といえるかもしれません。

ただ、ムーアの法則やら、チープ革命で劇的にコストが下がったのに対応して、切実に生産性をあげなくてはならない、など、多くの場合、ある種の必然性に迫られて、「最近評判の良いあのやり方を試してみようか」という形で「流行」のものを導入してみる、という現場が多いのではないでしょうか。

もちろん、一部のコンサルタントなどが、実際には間尺に会わないような技術や製品提供形態、はてはビジネスモデルにいたるまで顧客に押しつけ、間違った流行にのるように焚き付けることもあるでしょう。「コンサルティングの悪魔」などの警告の書には、「チェンジマネジメント」の悪用や、騙しのテクニックなど、騙した本人の経験談として詳細に語られています。

このような相手に接したときは、「まてよ。急いで変えさせられようとしているこのやり方はいつまでもつのだろう。
すぐに時代遅れになるのではないか。それまでに投資が回収できるのだろうか。」とシューマンの言葉をヒントに
レビューしてみても良いかもしれません。

そして、高額のコンサル料を払い続ける、という作業を「歳をとるまで追い続けている」と
誰からも認められない馬鹿者になってしまうどころか、会社の財産が失われ、いずれは倒産の憂き目にあうことになるでしょう、と。