nomuran's diary

野村直之のはてな日記(後継ブログ)です

OCW紹介の「情報処理」記事を読んで

nomuran72008-09-17


先日の日記、未来への提言「思想家 ノーム・チョムスキー〜真の民主主義を育てる〜」 この中で、MITの宮川繁教授のOCW (Open CourseWare) へのチョムスキーのコメントに触れました。
 
さきほど情報処理学会誌2008年9月号を手にとってみたところ、eラーニング特集の冒頭に宮川先生執筆のOCWの紹介記事がありました(原稿執筆は上記NHK取材より前だったかと思います)。

http://fw8.bookpark.ne.jp/cm/ipsj/mokuji.asp?category1=Magazine&vol=49&no=9
カラー図版入り10ページもの記事ですので、非会員の方が630円でダウンロードして読んでも後悔しないと思います。

■文献番号: IPSJ-MGN490903
■文 献 名 : eラーニングの広がりと連携 : 1.オープン・コース・ウェアの現状と展望
Collaboration in Spreading e-Learning : OpenCourseWare - How It Started and Where It is Going
■著  者: 宮川繁 (マサチューセッツ工科大学) Shigeru MIYAGAWA (MIT)
■言  語 : 日本語
■発行年月日: 2008年 9月 15日
■ページ数: 10ページ  本誌掲載頁:3-12ページ
■サ イ ズ : A4

■価  格: 購読者:\0  会員:\0  非会員 \630
※ PDF(ダウンロード)の価格です。 ペーパー(論文単位)の価格はこちら
■カテゴリ: 会誌 特集 

1ページ目だけは立ち読みできますね:
http://shelf3.bookpark.ne.jp/ipsj/view2.asp?content_id=IPSJ-MGN490903-PRT&bv=35A9B6E40143A982E85D16A502A1C951&category=Magazine


この写真のProf. Lewinは、NHKの先の番組に動画で出演してました。自分が振り子になりながら、「痛い、痛い」と言っていたのが印象的。

宮川先生の記事は、2000年に人文社会系からただ一人委員に指名されたいきさつから、当時のドットコム・バブルに流されずに、本質を深く吟味した結果、無償提供+donationという「最高の」ビジネスモデルにたどり着いたことなど、当事者ならではの生々しい(といって端正な)文章でつづられています。

※そういえば、10数年前はもっぱら言語学論文を拝読していたこともあって、ほとんど英語の文章しか読んでいませんでしたが、、いやはや日本語もさすがです。
 
私自身、従来は独立事象として知り、活用していたことが、いくつか結びつく、という「ユーレカ!」的な発見がありました。
 
・お隣ハーバード大でL. Lessig教授がCreative Commonsを開発したのに乗ってOCWとその派生成果物の著作権を扱うフレームワークの大半をスムーズに決めることができたこと。
・少数ながらクレームをつけてきた出版社には、お金よりも、「ocw.mit.eduからのリンク」を贈呈することで著作権クリアできたこと。
・MIT入学生の37%が高校時代にOCWにアクセスし、それが理由で志望校を決めたこと。
 
この3点目についていえば、私は法政大大学院で、「サービスの本質理解」に関する講義を毎年1回は喋っているのですが、数種類の「サービスの品質」がある中で、「探索品質」(事前に品質がある程度評価・推測できるサービス)でも「経験品質」(体験中に品質がわかる)でもない、「信用品質」というのがある、と紹介しています。これは、サービスを受けた後でも、効果があるのかどうかわからないサービス、ということで、「このような(今私が喋っているような)大学の授業が典型的に信用品質です。在学中はおろか、卒業して何年もたっても役に立つかどうかわからないのですから。ちなみに、そういう理由もあって、大学は立派な校舎とか豪華なパンフレットとかに案外こだわるのです」といって毎年笑いをとろうとしています。
 
しかし、大学教育が、この「信用品質」を脱して、「探索品質」あるいは、試用してみることで「経験品質」を備えたサービスに昇華できることを、OCWが証明した、といえるでしょう。

来年の講義資料は、上記をもとに書き換えることになるでしょう。
 
あと、「メタデータの野村」としてやるべきことは、OCWメタデータと他種のメタデータの相互変換等かもしれませんが、、教材の世界の中ではさまざまな試みがすでにあることと思います。そこで、k教材や講義プロセス以外リソースと、あっと驚くような連携を実現し、両者の価値が1+1=3にも4にも5にもなるように、オープンなコンテンツの価値が増すような仕組みの発明、利活用に貢献できたら幸いだな、と思っています。